仮想通貨の中でビットコインに次ぐ時価総額を誇るイーサリアムとは何なのか、できるだけ分かりやすいように解説したいと思います。
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もくじ
イーサリアムはプラットフォーム
仮想通貨の代表格であるビットコインは、ブロックチェーン上にコインの移動履歴を全て書き込むことで、通貨として扱えるようになっています。
参考これぐらいは知っておきたい!ブロックチェーンって何なの?
移動履歴とは、「コインがどこからどこに移動した」という情報です。結果的にそれらの情報は今どこにどれだけのコインがあるのかというコインの存在証明として利用できます。
そのブロックチェーンに、「コインの移動履歴」なんていう限定された情報じゃなくて、もっと何でも書けるようにした方が良くない?ってことで作られたのがイーサリアム(Ethereum)です。
イーサリアムのブロックチェーンと、ビットコインのブロックチェーンはもちろん全く別物で、イーサリアムは独自のブロックチェーンを持っています。
イーサリアムのブロックチェーンは特定の機能を実現するためではなく、非常に柔軟な使い方ができるように設計されています。
ビットコインとイーサリアムは例えて言うなら、ガラケーとスマホみたいなもんです(スマホの方が優れているという話ではありません)。
ガラケーは電話をかけるという機能に特化した機械であるのに対して、スマホならアプリを入れることで何でもできるようになります。スマホが提供しているのは何らかの機能ではなく、アプリが動く環境(プラットフォーム)です。
イーサリアムが目指す所はそこです。ブロックチェーンという非中央集権システム(P2P)上で動作するアプリケーションを作る為のプラットフォームです。OSと言った方が分かりやすいかも知れません。
ブロックチェーンはパブリックなP2Pで管理される非中央集権システムなので、特定のサーバーに頼る必要はなく、改ざんが非常に難しく、停止することはまずありません(ゼロダウンタイムシステム)。
言わば、管理者不在で自律的に稼働し続けるコンピュータ(実体は無数に分散して存在する)を作ったようなものです。ブロックチェーンコンピューティングとでも言える新しい演算機の仕組みです。
その自律分散型コンピュータ上でアプリケーションを動かすためのプラットフォームがイーサリアムです。
アプリケーション自体は、第三者が自由に作れるようになっています。イーサリアムはあくまでそのプラットフォームです。
そういう意味では、ビットコインはプラットフォームとアプリケーションが一体となったものと言えます。
イーサリアムのような自律分散型プラットフォーム上で動くアプリケーションのことを、DApp(Decentralized Application)(非中央集権アプリケーション)と言います。
ビットコインのブロックチェーンにも拡張性があり、コインの移動以外の情報も少し書き込めるようになっています。その拡張性を利用して仮想通貨以外のデジタル情報を取引できるようにした技術をブロックチェーン2.0と呼んでいます。
そしてイーサリアムのブロックチェーンのように、仮想通貨のやり取り以外を主な目的とするブロックチェーンは、特にブロックチェーン3.0と呼ばれています。
イーサリアムって通貨じゃないの?
じゃあ、取引所なんかで売買されているイーサリアムってのは何なのかと言うと、もちろん仮想通貨です。
「イーサリアム」という言葉はプラットフォーム全体のことを指していたり、通貨のことを指していたりと、ちょっと曖昧な使われ方をしています。区別して言う場合は、プラットフォームのことをEthereum(イーサリアム)、通貨のことをEther(イーサ)、あるいはETHと表現することが多いです。
ETHは、イーサリアム上で動くスクリプト(アプリケーション)を動かす為の手数料として使われます。
ETHもEtherも単位として使われますが、一般的にはETHを使うことが多いです。取引所などでも、
1ETH = 34,000JPY
みたいな感じで使われていると思います。
一般的に知られている単位はETHですが、Etherの最小単位はweiです。
1ETH = 1,000,000,000,000,000,000wei
読めますでしょうか? 100京weiです。
逆に言うと1weiは10のマイナス18乗ETHです。めちゃくちゃ小さいです。笑
取引所などではETHで表されますが、イーサリアムの内部ではこのweiを基準としてkwei(キロwei)、mwei(メガwei)、gwei(ギガwei)などの単位を使ってやり取りされています。
ETHはあくまでイーサリアム内部で使われる通貨なのですが、今後、広く一般的に流通する可能性もあります。
ETHはイーサリアムを動かすために必要不可欠なリソースとして価値を保証されているわけですから、もしイーサリアムシステムが社会のインフラとして広く浸透すれば、ETHという通貨はとてつもなく強固な価値を担保とすることになります。
米ドルがアメリカ合衆国を担保にしているように、円が日本国を担保にしているように、ETHはイーサリアムシステムを担保にする通貨ということになります。
将来、イーサリアムシステムがどこまで大きくなるかはまだ分かりませんが、もし世界中で必要不可欠なインフラとして使われるなら、国なんていうレベルを遥かに超える大きな価値を持つものとなりえるでしょう。
つまり、いまのうちにETHを買っておけば(以下自粛)
イーサリアムで出来ること
で、イーサリアムというプラットフォームを使ってどんなことが出来るのか?
独自トークンを発行する
イーサリアムのブロックチェーン上で管理される独自トークンを発行することができます。自前のブロックチェーンを持たない仮想通貨は特にトークンと呼ばれています。
※トークンの定義ははっきりしていないので一つの解釈だと思っていてください。
独自のブロックチェーンを持つ仮想通貨はマイニングの報酬としてその仮想通貨が発行され、普通はその発行限度額が決められていますが、いわゆるトークンの場合はその管理者が発行したものです。会社が発行するクーポン券みたいなものです。
トークンはその会社(あるいはDAO)のサービスを利用するために使えたりするので、その会社が大きく成長すればそのトークンの需要も高まり、トークンの価値が上がることになります。
※DAO・・・Decentralized Autonomous Organizationの略。下で説明しています。
有名なトークンは取引所で扱われており、売買することもできます。
IPO(新規公開株)のように、何らかのサービスや会社を立ち上げる際に独自トークンを出資者に対して株券のように渡すことで資金を集めるICO(Initial Coin Offering)という仕組みが、最近増えてきています。その多くはイーサリアムを使って発行されています。
ICOは、それっぽいwebサイトを作るだけで手軽に莫大な資金を集めることができ、まだ法整備も行き届いていない為、出資者を集めるだけ集めてドロンするような詐欺トークンも非常に多く、迂闊に手を出すと危険です。
が、その桁外れの集金能力とスピード感は、既存の仕組みを遥かに上回るもので、大きな注目を集めています(あまりに詐欺トークンが多いので規制の対象にもなっています)。
あと面白いのが、個人が自分のトークンを発行することもできます。言わば俺コインです。使い道も価値も、俺次第です。笑
スマートコントラクト
世界のあり方を変える可能性があるとして注目されているのがスマートコントラクトと呼ばれる仕組みです。
スマートコントラクトとは、自動的に執行される契約のことで、金融業、保険業、シェアリングエコノミーなど多くの業務を完全に自動化し第三者の仲介をすっ飛ばして行えるようになる可能性を秘めています。
多くの仲介業務が必要なくなれば、既存の経済構造が大きく変わることになります。
イーサリアムは、ブロックチェーン上に何らかの条件が揃えば執行されるスクリプトを仕込んでおくことができるので、アイデア次第で様々な契約を自動的に処理することが可能です。
イーサリアムはまさに、スマートコントラクトを実現するための仕組みと言えます。
DAO(Decentralized Autonomous Organization)
スマートコントラクトの一種と言えなくもないですが、DAO(Decentralized Autonomous Organization)という新しい組織のあり方が実現しています。
DAOは、日本語では非中央集権型自律分散組織などと訳されるもので、簡単に言えば社長のいない会社組織みたいなものです。社員だけで全ての意思決定を投票などにより行い、その組織の行動を決めることができる仕組みです。
投資ファンドなどで、この仕組みを使ったプロジェクトが実際にできています。
普通はファンドというのは、預かった資金をファンドマネージャーが運用するものですが、ファンドマネージャーに信任するのではなく出資者みんなで投票することで出資先を選ぼうという仕組みです。
このDAOという仕組み(管理者のいない組織)は、アイデア次第で今後いろんな場面で使われることになるかも知れません。
※DAC(Decentralized Autonomous Corporation/Company)と呼ばれることもあります。
イーサリアムの歩み
イーサリアムの構想は、2013年11月にVitalik Buterin(当時19歳!)が発表したホワイトペーパーにより端を発します。ナカモトサトシ氏がビットコインに関する論文(ホワイトペーパー)を発表してから約5年後のことです。
2014年7月、イーサリアム構想実現の為に行われたオンラインクラウドセールにより財源が集められ、非営利組織イーサリアム財団(Ethereum Foundation)が設立されました。
もちろん、提案者のVitalik Buterinもイーサリアム財団の中心メンバーとして開発に参加しています。
イーサリアムはリリース以降、4度のメジャーバージョンアップを予定していて、2017年9月現在ではHomesteadと呼ばれるバージョンまで公開されています。
version | コードネーム | リリース時期 | 主対象者/機能 |
---|---|---|---|
ver.0 | Olympic | 2015年5月 | |
ver.1 | Frontier | 2015年7月 | マイナー向け |
ver.2 | Homestead | 2016年3月 | アプリ開発者向け |
ver.3 | Metropolis | 2017年中? | Mistブラウザ |
ver.4 | Serenity | 未定 | PoSへ移行 |
※PoS・・・Proof of Stakeと言われるマイニングにおける合意形成アルゴリズムの一つ。PoWからPoSに移行する。
The DAOによるETH盗難事件
イーサリアムを語る上で避けて通れないのが、The DAO事件です。
The DAOというのは、上記で説明した非中央集権型自律分散組織(DAO)の一つの組織名称(社名みたいなもの)です。
The DAOという自律分散型の投資ファンドがイーサリアム上で稼働していたところ、そのプールしていた資金(ETH)を誰かが勝手に自分のアドレスへ送金してしまいました。その額、なんと360万ETH(当時のレートで約65億円)です。
盗難されたETHを取り戻すには、イーサリアムのブロックチェーンをハードフォークさせることで、その送金を無かったことにするしかありません。
ブロックチェーンをマイナーたちの合議で意図的に書き換えるなど本来ならあってはならないことですが、被害者救済の為にやむを得ずブロックチェーンをハードフォークさせ強引にその不正な送金を無かったことにしました。
先進的なシステムで起こった不具合だった為、よく理解されずイーサリアムに対してネガティブな報道も多く見られましたが、コードに欠陥があったのはThe DAOの方(アプリケーション側)であり、イーサリアム自体の脆弱性を突かれたわけではないようです。
とは言え、イーサリアムに対するネガティブな印象は拭えず、当時ETHの価格は20%以上急落しました。
その時、枝分かれした側(送金を取り消した方)が現在のETH(Ethereum)です。
そして、枝分かれしたもう一方のブロックチェーンもそのまま存続することになりました。どんな理由があろうともブロックチェーンを意図的に書き換えるなんていうことは絶対に許せないという信念を持つマイナーたちが少なからず居たからです。そちらが現在のETC(Ethereum Classic)です。
イーサリアムの歴史が、The Daoによる盗難事件があった世界と無かった世界に分離してしまったような状態です。パラレルワールドみたいな感じです。
現在のところ、時価総額で見るとETHの方(盗難事件を無かったことにした方)が圧倒的に多くなっています。
これからのイーサリアム
北欧のエストニア共和国が国家レベルでイーサリアムを利用し始めたりと、イーサリアムはどんどん活発になってきています。
今後、ますますイーサリアムを利用したスマートコントラクトが一般的になっていくはずです。
「社会にとって必要不可欠なシステムを稼働させること」に価値を担保させるETHは、正直ビットコインを遥かに凌駕するポテンシャルを秘めていると思います。
今のうちに、ETHを買い込んでおけば5年後、10年後には・・。
コメント
どうしてこんなに分かりやすく説明できるのでしょう。
今までどんなものを読んでも分からなかったブロックチェーン、イーサリアム・ビットコイン、トークンの関係がようやく分かりました。
ウォレットの記事も分かりやすくて感動しました。
こんなに分かりやすくて勉強になる記事をありがとうございます。
by aoka 2018年10月4日 5:10 PM